京都伏見介護殺人事件の真相(裁判官も涙した温情判決)

京都伏見介護殺人事件の真相 簡単解説

生活に困った息子が認知症の母親を殺害(その後も解説)

高齢化社会と言われる日本では「認知症」による介護問題が深刻になっています。

世間では80・50問題として、80代の親が50代の子供の面倒を見ていると社会問題になっているくらいであります。

近年では日本人の寿命が伸びている事もあり、90・60問題 &100・70問題へ移行しつつあります。

日本人女性の平均寿命は87歳で世界1位。男性は81歳で世界5位(厚生労働省の最新統計2023年度より)

今回は、まっとうな50代の息子さんが80代の親の面倒を見ている中で起こってしまった息子が認知症の母親を殺害してしまう悲しい事件になります。

まさに”明日は我が身”と感じさせられる

とてもx2 悲しく考えさせられる内容の事件がありました。

個人的にも心の奥に刻まれた

”絶対に忘れてはいけない事件” だと思っております。

当方は一生忘れる事がないくらいまでに、しっかりと記憶に焼きつきました。

事件というよりも

もし同じ状況に立たされた日には

誰もが起こりうる「必然」の出来事だった…

のではないか?とも思っています。

未来の一人でも多くの方々に同じ過ちを絶対に繰り返さないでもらう思いを込めまして、まとめメモ解説として記録に残しておきます。

それが

「京都市伏見(ふしみ)認知症母親殺害 心中未遂 介護事件」になります。

一般的には

京都伏見介護殺人事件
(きょうと ふしみ かいごさつじんじけん)

略して

・京都介護殺人事件(京都介護事件)

・裁判官・裁判長までもが泣いた介護事件(温情判決)

・介護疲れの息子が認知症の母親を致し方なく殺してしまった悲しい事件

とも言われています。

2006年2月1日 京都市伏見区桂川河川敷で
(ふしみく かつらがわ かせんじき)

息子である片桐 康晴さん(54歳)
(かたぎり やすはる)

認知症の母親(86歳)を殺害して

無理心中を図ったとみられる事件の初公判が行われました。

事件の詳しい内容については

認知症の母親の介護で生活に苦しくなった息子さんが母と相談した上で、自らの手で母を殺害したという内容になります。

康晴さんは母を殺害した後、自分も自殺を図ったのですが、通行人に発見されて一命を取り留めました。

元々、息子(長男)の康晴さんは両親と3人暮らしだったのですが、1995年に父親が死亡しています。

父親が亡くなった後、

京都府内のアパートに母と二人で暮らしてました。

ここから母と息子の二人だけの生活が始まります。

二人暮らしをして間もなく

母に認知症の症状が出始めてしまい

息子さんは一人で懸命に母の介護をしていました。

昼は派遣社員として工場で働き

夜は母の介護をしていました。

父の死から10年後の2005年4月頃より母の認知症の症状は、さらに悪化が進みます。

週3日~4日は夜間に寝付かなくなる程までに苦労して悩んでおり、昼と夜の逆転生活に変わってしまうくらいまでに大変な思いをされていました。

仕事中には母親が勝手に外に出て徘徊しては警察に保護される日々に変わります。

この頃まで康晴さんは、どうにか派遣の仕事を続けつつ、介護サービスのデイケアを利用していたのですが、介護の負担は軽減しなかったようです。

2005年9月 長年勤めていた職場を退職してしまいます。

その時の様子を近所の人がテレビのインタビューにて答えてくれています。

近所の人より

(康晴さんが)「散歩させなアカン」と言って、散歩させてやって

途中で(母親が)座り込むんですよ
すると、(康晴さんが)おんぶして

家まで連れて帰ったりしていた

おむつを抱えて…

その後、収入が途絶えた事を理由に生活保護を申請。

生活保護で安定した生活が送れると思いきや…?

失業給付金(失業手当)が残っていた事や求職(まだ働けるので仕事をして下さい)という理由で、生活保護は認めてくれなかったようです。

京都市伏見福祉事務所へ

それも過去3回にも渡って生活保護を申請していたのですが、担当者から返ってきた答えは

福祉担当者より

「まだ働けるので、職を探して働いて下さい」

と言われるだけで

アドバイスすらなかった

と言います。

当時でも問題にならない事自体がおかしいとは思いましたが、今だったら大問題で、とんでもないですね。

令和のこの時代だったら”吊し上げの刑”になりかねないです。

生活費は「月10万円」

派遣の工場で働いていた時の

失業給付金(失業手当)だけが頼りだったと言います。

失業給付金は働いた年数に応じてもらえる期間が決まっています(最大でも1年もらえません)

食事についても

母親には1日2回の食事を与えていたのですが、康晴さんは2日に1回程度しか食事を摂っていなかったようなのです。

この当時の心境を法廷でも述べていました。

私が食事の支度(したく)をしていると

母は赤ちゃんのようにハイハイしながら寄ってくる。

私が抱いてあげると母は笑う。

母の介護と両立しながら仕事を探しますが

日夜、逆転生活と自身の年齢も関係しており

結局、仕事は見つからず…

2005年12月には頼りにしていた失業保険の給付が終わってしまいました…

この頃になるとクレジットカードによるカードローンも限度額一杯まで達しており、介護のデイケア費用や家賃のアパート代が払えなくなってしまいます。

とうとう限界が来てしまいます。

2006年1月の真冬

康晴さんは母に対して

もう、お金ないんやで

生きられるのも

この1月までや

母より

「そうか、あかんか」

康晴さんより

「生きたいか?」

母より

生きたいなぁ…

2人で生きたい

お前と一緒

そして…

家賃の支払期日である「1月31日」

自宅を掃除してから親子は最後の旅にでます。

この日、長男は母親との心中(自殺)を決意します。

最後の親孝行に…

康晴さんは車椅子の母を連れて京都市内を観光に出かけました。

京都三条の繁華街を思い出を振り返るように二人で歩きました。

手元の残り少ない、わずかなお金を握りしめてコンビニで、いつもの”好きだったパン”と”ジュース”を購入。

母親との最後の食事を済ませ後、

沢山の思い出がある場所を見せておこうと

母の車椅子を押しながら河原町界隈を、ゆっくりと歩きます。

やがて死に場所を探して桂川河川敷へと向かいました。

遊歩道で足を止めて

── 康晴さん(息子)

「桂川やで、もうお金ないやろ」

「もう生きられへんのやで」

「死ぬしかないんや」

「(すべて)ここで終わりや」

という力ない声に…

─ 母は

「そうか、あかんのか」

「康晴、一緒やで」

「お前と一緒や」

と答えた。

── 康晴さん(息子)

「すまんな…」

と謝りながら

すぐそばで、涙を流し

すすり泣く息子に対して

─ 母は

「康晴、こっちに来い」

と呼び

息子が母の頬(ほほ)にくっつけると、

「康晴は、わしの子や。わしがやったる!」

この言葉に意を決して

康晴さんは、この瞬間に母の殺害を決意。

母の首を思いっきり、絞めて息の根を止めた。

その後、自分の首を包丁で切って自殺を図った。

近くの木で首を吊ろうと巻きつけたロープが、ほどけてしまった所で意識を失いました。

それから2時間が経過した後、午前8時頃には通行人が倒れている親子2人を発見して康晴さんだけが命を取り留めました。

その翌年、息子の康晴さんが母を殺した被告人(容疑者)となって判決が出ます。

2006年6月21日(水)

京都地裁の法廷より

東尾 裁判官より

(とうと)い命を奪ったという結果は取り返しがつかず重大だが

経緯や被害者の心情を思うと社会で生活して

自力で更生する中で、冥福(めいふく)を祈らせることが相当。

 尊い(とうとい)= 貴重で価値が高いことを言います。

として

検察側が求める「懲役3年(求刑)」に対して

康晴さんの判決については

・懲役: 2年6月(4ヶ月減刑)

・執行猶予: 3年

の判決を言い渡しました。

執行猶予 = 裁判確定の日から3年間(執行猶予3年)その刑の反省期間を設けるので、刑務所に入らなくて良いという意味になります。

認知症の母の面倒を苦労しながらみていたという理由から情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)により執行猶予なので、刑務所に入らない温情判決となりました。

冒頭陳述(ぼうとうちんじゅつ)の間、片桐被告は背筋を伸ばして上を向いていた。

肩を震わせ、眼鏡を外して右腕で「涙をぬぐう場面」もありました。

裁判では康晴さんが献身的(けんしんてき)に介護を続けながら、金銭的に追い詰められていった過程を述べました。

献身的(けんしんてき)= 自分の身命&利益を犠牲にする程まで一心に、ある人や物事に力を尽くす事を言います。

殺害時の2人のやり取りと

これまでの裁判のやり取り(法廷にて)

康晴さんは以下の事も語っておられます。

母のことが大好きでした

介護に疲れたことはあったが…

嫌になることはなかった

むしろ楽しかった

もし生まれ変われるのであれば…

「もう一度、母の子として生まれたい」

この言葉に東尾裁判官は

しばらくの間は言葉を詰まらせ

目を赤くして涙をこらえるようにまばたきをして

康晴さんの心情について

(母である)被害者は(康晴さんに対して)被告人に感謝こそすれ

決して恨みなど抱いておらず

今後は幸せな人生を歩んでいけることを

望んでいるであろうと推察される

と述べました。

最後に

「裁(さば)かれているのは被告(康晴さん)だけではない」

「介護制度や生活保護のあり方も問われている」

と康晴さんに同情しました。

さらに続けて

絶対に自分で自分をあやめることのないように…

”お母さんのため”にも

幸せに生きていって下さい。

と述べて法廷は静まり返った。

最後に康晴さんが

「ありがとうございます」と

深々と一礼をして左手で涙をぬぐいました。

この判決を受けて

康晴さんの弁護士がテレビの取材に受けていたのですが、本人に「判決の内容についてどう思うか?」という質問に対して

片桐弁護士を通じて

康晴さんより

非常に温情ある判決を頂き

感謝しています

なるべく早く仕事がしたいです

と言っていたそうです。

近所の人も

おばあちゃんより

(裁判の判決は)当たり前だと思った。

相談してくれたら、相談に乗ったのにと思ったんだけど

と語っておられました。

それから約10年後の2015年、

息子さんに取材を試みた方がいらっしゃいます。

京都伏見介護殺人事件の真相(その後)へ続きます。

ぜひ1つの参考にして頂ければ幸いです。

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